ミンメイが帰宅する。 「帰りました。行事にレッスンと毎日が充実しているのはいいけど、くたくたよ」 「そうね。あとは勉強ぐらいね」 とミンメイの伯母フェイチュンが返答する。ミンメイは苦笑しながら 「それが正規の学校ではないけど準備しているんだって。先生の経験者とビデオ教材を使って。地球に戻ったら試験で正規卒業としてもらえるようにって」 「はあ」 とミンメイの伯父シャオチンの力ない返事を無視してミンメイが続けて 「三池さんなんか、行事の段取りを調整して、レッスンのときに来てくれて、生活区画のシステムを管理して、それなのに学校の準備しているんだもん。他にもいろいろしてるようだし。これで勉強しないとは言えなくて」 「はあ」 「なんか元気ないね、伯父さん」 「ミンメイは忙しいようだが、やることがなくてなあ」 「あらお店を始めないの」 「しかし宇宙だぞ」 とシャオチンが言うと、フェイチュンも 「そうね食料も配給制だし」 「三池さんに相談してみる」 「ミンメイ」 と簡単に相談と口にしたミンメイへシャオチンが叱るように言う。 「そうですよ、忙しくされているのでしょ」 とフェイチュンも同意するように言う。だがミンメイは臆することなく 「マクロスが地球に帰るまでに時間がかかるからストレスでノイローゼにならないように普段通りの生活することが重要だと言っていたもん」 「でも食材は」 というシャオチンの質問に、ミンメイが 「三池さんに言えばなんとかなると思う。生活インフラをすべて管理しているから軍の偉い人よりもよほど力があるし。ねえ娘々を営業しようよ。戦争中だって営業していたんでしょ」 と力強く答える。その言葉に意欲がわいてきたのかシャオチンが 「そうだな、何もしないよりはいいかもな」 と言うと 「そうよ営業しましょ。そうと決まれば娘々の設備や外装を運び込まないと。今度輝を呼んで手伝ってもらえね」 とミンメイが話を進める。輝を呼ぶというミンメイにフェイチュンが 「ミンメイ、輝さんも三池さんと一緒に貴方を助けてくれた恩人でしょ」 「輝なら大丈夫よ。幸運を運んでくれると思うよ。そうだ今度輝に娘々のおいしいチャーハンを食べさせてあげてね」 とミンメイが明るく答える。 輝が電動キャリアに乗ってくる。それを見たミンメイが 「遅いじゃない、輝」 「これでも借りるの大変だったんだぞ」 ミンメイが 「三池さんが調整してくれてたはずだけど。ま、いいか。伯父さん伯母さん、輝が来たよ」 と呼ぶ。二人が来ると、輝が 「一条輝です」 と名乗り頭を下げる。シャオチンが 「頭を下げるのはこちらの方です」 そしてフェイチュンも 「そうです。本当にありがとうございました」 と言うと、輝は照れたようで 「いやあ」 と答える。シャオチンが 「で、ミンメイと二人きりで二日間って」 と言うと輝は困ったような表情になるが、ミンメイは明るく 「輝に助けてもらってたの」 と言う。すると輝は曖昧に笑う。そこに商店街会長の板橋が 「ミンメイちゃん、彼は」 と遠慮なく会話に入ってくる。 「輝よ。二日間助けてくれた」 「ほう、彼が」 と言うと、板橋は輝の腕を叩くと 「いやあミス・マクロスのミンメイちゃんと二人きりとは色男ですなあ。で」 と言い、興味津々という表情をする。ミンメイは 「さっきも言ってたけど、輝は助けてくれたの。とっても優しいんだから」 と怒ったように言う。板橋が 「そうですか。そういえば何するんですか」 「娘々を再開する準備」 「再開の準備って」 「三池さんにお願いしたら快く協力してくれたの。他の店も営業してくれるといいよねって。会長さんも三池さんに頼んでみたら」 「そんなこと言ってましたか。皆を集めて三池さんのところへ相談しに行かないと」 落ち着くのを待っていた輝が 「ミンメイ、で何するの」 「部材倉庫。そこに娘々にあった道具とか内装があるの。残念なことに外に置いていた店の案内板は無くなったんだけどね」 輝が 「ミンメイ、これは」 と言って荷物を運んでいく。荷物の搬入が落ち着いたところでミンメイが 「こんなところかな。そうでしょ伯父さん」 「そうだな。しかし輝さん、悪かったなあ」 とシャオチンが輝に頭を下げる。 「いいですよ。暇だったし」 と輝が答えると、フェイチュンが 「輝さんは軍や民間協力隊で活動しないのですか。ミンメイから聞きましたけど優秀な飛行機乗りとか」 と質問する。輝は気が乗っていない感じで 「ここ、宇宙空間ですからね。飛行機乗れても」 と答える。そこでミンメイが 「あら宇宙空間でも似たようなものでしょ。輝も何かしないと」 と割り込んでくるが 「でも」 と悩んでいる様子の輝を見たミンメイは 「伯父さん、チャーハンお願い。三池さんにお礼を言って届けてくる。娘々の出前第一号ということで。輝も食べていって、二人っきりの時に約束したよね」 「わかったよ、ミンメイ」 と言ってシャオチンは厨房に向かう。フェイチュンも 「輝さん、食べていって」 と言う。その様子を見たミンメイが部屋出て行く。それを見た輝が 「ミンメイ、何するの」 「着替え。せっかくだからチャイナドレスで出前をしようかなと。娘々の宣伝も兼ねてね」 と輝を見ずに答えて去って行く。 ブリッジに打ち合わせを終えた未沙が入ってくる。シャミーが 「早瀬中尉、打ち合わせはどうでしたか」 「いいことは少なかったわね」 と厳しい表情で未沙が答える。ヴァネッサが 「先行き厳しそうですね」 「順調なのはセンターブロックでの生活ぐらいね。店舗の営業開始に伴い、通貨をどうするかが一番盛り上がった話題じゃね」 と未沙が呆れたように報告する。キムが 「で、どうなったんですか」 「三池さんが地域通貨で運用すればと説明するまで、意見の言い合いは収束しなかったわ」 と嘆くような未沙の言葉に、恭子が 「議論に参加しなかったのですか」 と言うと、それに未沙が 「三池さんがいろいろと準備しているのを知っていたから黙っていました」 と答えた。クローディアが 「何で」 と説明を求めると 「準備している彼に任せる以外に良い方法がありますか」 と未沙が短く答える。クローディアは苦笑しながら 「まあそうね。となる彼との連絡役は大事ね役目ね。彼、無茶してない。彼が倒れたら大変なことになるから健康管理もしないと」 と言うと、未沙は真面目な表情で頷く。ヴァネッサが自身の疑問を 「しかしセンターブロックって何ですかね」 と口にすると、恭子も 「生活に必要なシステムが揃いすぎていますし」 と同意する。未沙は 「三池さんは長距離移民用のユニットだったんじゃないかって」 と言うとヴァネッサが 「確かにそれだと説明つきますね」 と納得したように同意するが恭子は 「そんな都合のいいことってあります」 と言うがクローディアが 「いいじゃない、利用できるものはなんでも利用しないと」 と答える。艦内通信に対応していたこずえが 「三池さんは面接のためオフィスへ向かっているそうです」 と答えて終了する。そのタイミングで自分の通信が終わったシャミーが 「こずえ、三池さんがどうしたの」 「なんか下でミス・マクロスがチャイナドレスで三池さんへ出前に来て話題になっていたらしいの」 と答えると、同じく通信の終わったキムが 「三池さんって、人気者ねえ」 と感嘆混じりに言うと、ヴァネッサは皮肉交じりに 「単なるアピールじゃないの」 と笑う。クローディアが 「未沙、彼の食生活って大丈夫。彼が倒れると大変なのよ」 と笑いながら言うと、未沙は返事ができずに黙ってしまう。 「失礼します」 と言って青年が扉から出て行く。 「少し線が細くないですか」 「軍でいきなりというのも」 「まずは民間協力隊でいうことで、どうでしょう三池調整官」 と軍からの面接官達が勝手に決めるが結論自体は三池に委ねる。三池が 「はあ」 と曖昧に同意したことで、マクシミリアン・ジーナスの民間協力隊入りが決まった。 「次」 という面接官の言葉に、乱暴に扉が開き先程より大きな男が入ってくる。 「柿崎速雄であります。この緊急事態は自分にお任せください」 と調子の良いことを言う。そして 「さっき話題のミス・マクロスでしたっけ、いやあチャイナドレス似合ってたなあ。おっほん、あんな美人を守るために、この柿崎何でもする所存です」 娘々を出て艦内を目的もなく歩いている輝。それを見つけたフォッカーが 「おい、輝。元気ないな」 と声をかける。輝はフォッカーに向くと 「そりゃそうですよ、これからどうしたらいいか分からなくて」 と力なく答える。するとフォッカーは 「なんだ、輝。身体が動くんだったら、やることなんていっぱいあるだろ」 と叱責するように言う。輝は拗ねたように 「そりゃあ三池さんに言われて、いろいろな雑務をしてますけど。どうもイマイチで」 「飛行機に乗りたいってか。今は無理だろ」 「そうですけどね」 と輝が答える。フォッカーが 「じゃあ三池さんに使われるのが嫌か」 「まあ軍よりはいいでしょうけど。でも民間協力隊って言われても場合によっては軍に移籍させられるんでしょ」 「よく知っているな」 「三池さんから聞いてますから」 と輝が情報源を答える。フォッカーが言い出しにくい感じで 「なんだ、まあ、お前みたいに軍関係の学校に関わっているのが、志願すると優遇されるのもあってな。少しは俺も面倒みれるからな」 「そういうことですか」 「なんだ乗り気じゃないな。輝、女か」 とフォッカーらしく聞く 「そんなんじゃないですよ」 と輝が落ち着いていないのを感じると、フォッカーは 「ミス・マクロスのミンメイちゃんか。さっきチャイナドレスの出前が話題になっていたぞ。センターブロックの居住キャンペーンで話題になったと思ったら、男と二日間二人っきりだったことが暴露されてまた話題になって、今度は三池さんへチャイナドレスだからな」 「そうですか」 と力なく輝が答える。それを見たフォッカーが笑いながら 「お主、惚れたな。二日間で何があったかしらんが、あの子を振り向かせるのは大変だぞ」 「わかってますよ」 「一つだけアドバイスしてやる」 「何ですか」 「三池さんの方は相手にしていないから安心しろ」 「どうだか」 「断言できる。あの男は女性にもしっかりとしていることを要求する。だからミンメイちゃんじゃまだまだだよ」 と言って輝から離れていく。そして 「俺の言ったこと考えておけ」 と言って去って行く。 「センターブロックにあったフォールドシステムの消失に伴い、近くの反応炉も失われました。このため現状では主砲を利用することができません」 と技師長の仲野中佐が言う。その報告に軍関係者が声を失う。しばらくしてグローバルが 「なんとかならんのかね」 その言葉に仲野中佐が 「艦がブロック構造となっているのを利用して、前部の主砲ユニットと後部の推進ユニットに接近させることにより推進ユニットにある反応炉を利用します。ですがそれでも出力の不足が予想されるため、センターブロックで居住用に利用している反応炉を転用する必要があります」 「どんな影響が出るのかね」 「三池氏にも確認しましたが、センターブロックからは重力制御系システムに利用されている反応炉が転用可能とのことです。すると」 「センターブロックの重力制御ができなくなり大混乱が生じるということかね」 「はい。さすがにエアロックの制御を行う基幹システム及び空気や水の循環系システムは優先させなければなりませんので。またトランスフォーメーションと呼んでおりますがこのフォーメーションを実行することで推進系の出力が減りますので機動性に影響します」 と影響を説明する。横から白衣を着た女性技官ジーナ・バルトロウが 「現状の設備では反応炉を新規に作り出すことはできません。搭載している小型機の反応炉を集めても大きな出力とはなりません。ですから回収した大型艦艇の反応炉を転用することぐらいしか出力を上げる方法がありません」 と発言する。 未沙が 「ということでバルキリー隊はその移動力を活かして、デストロイドでは防御が難しくなった箇所へ投入します」 とバルキリー隊の隊員へ運用方法について説明を行う。納得していない様子のバルキリー隊員達。代表してフォッカーが 「なあ早瀬中尉、なんでバルキリーの移動力を活かして敵へ攻撃するを想定していないんだ」 と言うと、同席していた恭子が厳しい口調で 「フォッカー少佐と言えども、こちらの指示には従って頂きます」 と言い放つ。その言葉に更に不満そうな表情をする隊員達。さすがにフォッカーも 「大橋君、その言い方はないと思うぞ。何かできることはないかと思って聞いたんだが」 と口にすると、未沙が 「少佐、大橋少尉の発言は厳しすぎました。謝罪させてください」 と未沙が頭を下げるが続けて 「これは三池さんと戦術シミュレーションを繰り返した結果での結論です。もう一度説明しますが、現状マクロスは重力制御も利用して微量ですが常に加速して移動しています。そのためマクロスの重力制御圏を出て自力航行した場合に、目的の場所まで移動した後に移動しているマクロスへ帰還する必要があります。移動先が近くであればともかく、現状のバルキリーではそれだけの推進剤がないために遠くまでの移動をすると戻ってくことはできません」 その説明にエリートを自任しているマルコス・マイヤー中尉が 「それじゃあ未沙、俺たちは何のために存在しているんだい」 と馴れ馴れしい口調で尋ねると、続けてヤン・ルー中尉が 「そうです早瀬中尉、バルキリーの正しい戦闘運用はどういうものになるのでしょうか」 と厳しい口調で確認する。未沙は淡々と 「三池さんによると現状のバルキリーの性能では、拠点防御か、地球などの重力圏で重力制御システムが効きにくい状況での戦闘にしか利用できないとの見解でした。例外的なケースとしてマクロスの進行方向に向かって先行するというケースはあるとのことです。ただその場合でもマクロスが進路を変更した場合に帰還が見込めなくなりますが」 と答えると、両中尉が異口同音に 「早瀬中尉にしてはずいぶんと消極的ですな」 と呆れたような表情で言う。未沙は 「シミュレーションで得られた結果ですから。新たな戦術が思い付かれたら試してみるといいのでは」 と答える。マイヤー中尉が 「もし早瀬中尉に勝ったら何かお願いするかな」 というヤン中尉が 「私の方が先に勝ちますよ」 と未沙をターゲットに競争するかのような発言をする。そのときに恭子の表情がおかしいことに気付いたフォッカーが 「君はシミュレーションに参加しなかったのかね」 「参加しましたよ」 とそっけなく恭子が答える。疑問に思ったフォッカーが 「結果は」 「最終的な勝率6割でしたが早瀬中尉には全敗です」 と言うと何故かバルキリー隊員達から「おお」と声が上がる。するとフォッカーは未沙に向かって 「結果は」 と尋ねると、 「一人を除いて全勝でした」 と答える。それにバルキリー隊員達が再度盛り上がる。フォッカーは 「作戦部の連中相手にもか」 と聞くと 「はい」 と未沙が答えると更に盛り上がり、フォッカーも 「早瀬が優秀なのか、他のレベルが低いのか」 と呟くが、未沙は続けて 「ただ三池さんが事前に提出されていたプログラム相手では全敗でした。彼によるとこれは数学的な問題とのことで、実際に根拠を見せてもらって私も納得しました。実際にプログラムは全戦全勝という結果でしたし。新しい戦術を思い付いたら三池さんのプログラム相手に試してください」 と結果を説明するとバルキリー隊員達が静まりかえる。そのまま未沙は 「プログラム提出のみで直接端末を操作していないというかなり不利な条件でしたので、プログラムで勝ってもその後に本人と直接対戦してもらう必要がありますが」 と言い、唖然としている隊員達へ目線を送ってから未沙が続けて 「彼にシステムを書き換えられるのを軍上層部が恐れたのと、彼も疑われるのが嫌だったのでプログラム提出のみとなったようです。システムを改善してもらうために早く触ってもらった方がいいと思うのですが」 と補足する。三池への信頼感が込められた未沙の言葉にフォッカーが 「早瀬、ずいぶんと信頼しているじゃないか。そういやあ三池と2日間二人きりで生活してたんだろ、何かあったのか」 と言うと、未沙は顔を赤くして黙ってしまう。その未沙の反応を見たバルキリー隊員の一部から悲鳴のような声が上がる。一連の言動を見ていた恭子が 「何しているんだか」 と呟くと、それが聞こえたのか恥ずかしそうに未沙が 「大橋少尉、ブリッジに戻ります」 と彼女にしては弱い指示をして、その場から逃げるように出ていく。その未沙を恭子が追っていく。 夕方になって天望デッキで私服姿のミンメイが宇宙空間を見ながら 「ほんと宇宙なんだあ」 と呟く。輝は 「ミンメイ、どうしてここへ」 と尋ねる。ミンメイは 「三池さんに教わったの。明日オープンだから準備をしていた輝が行ってるんじゃないかって」 と答えると輝が不機嫌そうな表情になるが 「へえ」 と答える。ミンメイは 「こんな天望デッキがあるなんてね」 と感心したように言う。輝は意地悪く 「まあ実際は外の様子をリアルタイムで加工してスクリーンに映し出しているんだけどね」 「そうなの」 「いきなり強い光が入ると目に影響するし、一方で暗すぎて何も見えなかったりするからだって」 「ふーん」 「宇宙空間なんであんまり納得していないんだけどね」 と輝が言うとミンメイは笑いながら 「そうなんだ、私も一緒」 「飛行機に乗ることしか取り柄のない男だから、肉体作業をするしかないのさ。ミンメイみたいに歌が上手いとか特技もないし」 「あら歌が上手いのが役に立つとは」 「でも歌手デビューするんだろ。艦内を盛り上げるために、軍にも協力してもらって」 「そうだけど。そうだ輝も入隊キャンペーンに協力してよ」 「俺が」 と輝が嫌そうな表情をする。するとミンメイが叫んだかと思うと 「輝、あれ。娘々の案内板」 巨人サイズの筒が何本も並んでいる部屋で三池が 「どうやら小さくしたり大きくできるようだな」 と呟き。 「大きくなるのはリスクがあるから、となると小さくする方を試すか。それには生きたまま捕まえるしかないか」 ガウォークなVT-102で宇宙服を着て乗っている輝とミンメイ。ミンメイが 「勝手に使って叱られない」 というと輝が 「事前に訓練って言ってあるから大丈夫」 「でも三池さんに相談しなくて良かったの」 「平気平気。案内板欲しいんだろ」 と輝が明るい口調で言う。 「うん」 とミンメイが答えたのを確認すると輝は 「こちらVT-102。訓練を開始します」 と申告すると、恭子が 「了解」 と返答する。それを受けて輝はVT-102を宇宙空間へ出す。管制との通話をオフにして 「さて案内板はどこかな」 と展望デッキ付近へ移動する。 恭子が 「VT-102、VT-102。応答してください」 とコールするが応答はない。シャミーが 「どうしたんですか」 と尋ねると恭子は 「VT-102が訓練コースから離れているの。パイロットは」 と調べると嫌そうな表情で 「一条輝」 と言う。 ミンメイが 「どうしてマクロス周辺に物があるの。全部取り込まないの」 と質問すると輝が 「マクロスの重力制御に影響されて一緒に移動しているんだ。人や大きなものを入れたけど、残りは訓練を兼ねて作業しているんだ。先輩も普段は取り込みの作業をしているって」 輝は続けて 「あの辺りだな。思っていたよりも多くのものがあるなあ。案内板だけというのは難しいぞ」 というと強制的に管制との通話が再開される。スクリーンに出た恭子が強い口調で 「あなた、何やっているの」 と言い、それに輝が 「訓練だよ、訓練」 「訓練だとしても訓練空域内を出ているじゃないの」 と恭子が指摘するが、輝は知らなかったというように 「そうだっけ」 「あなたねえ」 と恭子が呆れる。更にスクリーンが追加され 「でどんな要件ですか、ミス・マクロスさん」 と三池が尋ねる。観念したようにミンメイが 「展望デッキで店の案内板を見つけたんです。それを輝に言ったら、取りに行こうということになって。輝が悪いんじゃないんです、ごめんなさい」 と言うと、恭子が 「あなたたち」 と叫ぶように声を出すが、三池が 「これかな」 と新たなスクリーンに案内板を映し出す。 「ずいぶんと近くに回収べきか悩む物があるなあ」 と三池が言うと、恭子が 「それだけ回収するなんて相当の技量が必要になりますよ。ってあなた何を操作しているんですか」 と三池の声がブリッジに聞こえていることで勝手なことをしているのではと叱責するように言う。ただ三池は悪びれず 「民間協力隊のコンソールから民間協力隊の機体へアクセスして、ブリッジとの通信を強制的に繫いだのですが」 と言うと、ヴァネッサが 「さすが」 と呟く。恭子は立ち直ると 「どうされるのですか」 と三池に確認すると、三池はあっさりと 「こちらで管制して回収させますよ。輝くん、計器を無視して私の指示に従って操作してくれる」 「いいですけど、大丈夫ですか」 と確認してきた輝に、 「大丈夫。機体も浮遊物も計算して指示するから。こちらの指示通りに操作して」 と三池が言うと、なぜか輝は素直に 「はい」 と頷く。三池が 「ミンメイさん始めるよ」 VT-102が腕に案内板を挟んで帰還コースに入ってくる。輝が 「訓練終了。これより帰還します」 と言うと、恭子が不機嫌そうに 「了解」 と答える。シャミーが 「凄かったですね、三池さんの管制」 というとキムも 「無駄のない指示だったものね」 と続けるとこずえが 「でも意味の分からない指示に良く従いましたよね、パイロット」 と言うと、恭子が 「ほんと良く従ったわよね」 と吐き捨てるように言うと、ヴァネッサが 「腕はいいんじゃないの」 と続ける。そのときにブリッジに未沙が入ってくる。するとクローディアが 「未沙、ものすごいショーがあったのだけど知ってる」 と尋ねると 「話題になって会議が止まって皆で見てました。指示の先読みと正確さ、そしてパイロットの制御の正確さにはベテランの隊長も感心してたわ」 と答える。クローディアが 「未沙なら管制できる」 と尋ねると未沙は笑いながら首を左右に振りはするが答えない。そんな中、輝から 「着艦します」 と通信が入るが恭子は 「アプローチが遅い。あとコールサインを言う」 と怒って返事をする。 娘々の店内でミンメイが案内板を見ながら 「輝、ありがとね」 というと輝はチャーハンを食べながら 「いいよ。いやあチャーハン旨いっす」 と答えると、シャオチンが 「嬉しいねえ。また食べに来てよ」 「是非」 と答える。フェイチュンも 「ミンメイを助けてくれた恩人ですから遠慮なんかいらないですよ」 と答える。ミンメイが 「ほんと、凄かったんだから輝。訳の分からない指示に正確に反応するんだから」 「まあね」 と輝が答えるとフェイチュンが 「そうなんですか」 「エアレースだとそういう細かい操縦が大事なので」 と自信たっぷりに輝が答える。ミンメイが 「そういえばオペレータの大橋少尉だっけ、厳しい顔でずっと輝に絡んできて。大変だったしょ、やっぱごめんね」 「いいよ。気にしていないし、先輩が取りなしてくれたから説教も終わったし」 と輝が答える。でもミンメイが 「先輩ってフォッカー少佐だよね」 と言うと、シャオチンが割り込んで 「エースで有名なフォッカー少佐かね」 「そう。輝の先輩なんだって」 とミンメイが説明する。フェイチュンが 「だから輝さんは飛行機の操縦が得意なんですか」 「いやあそれほどでも」 と輝が照れる。改めてミンメイが 「ほんとありがとう、輝」 と笑顔で輝を労う。 宿舎に戻った輝がメッセージがあることに気付き再生する。 「輝くん、お疲れ様。先に一言あると助かるんだけど。まあミンメイさんに何もなくて良かったよ。これからもその腕前を人のためにね」 と三池の言葉が響く。それを聞いて輝が 「ミンメイも喜んでくれたし、そのミンメイを守らなきゃ。軍に入るか」 と決意を口にする。
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