多くの子供達が集会室に入っていく。中では三池が雛人形を並べている。 「もう時間か。並べ終わるまで待ってね」 と三池にしては語尾に強い力込めて子供達へ言う。 「なにこれ」 「何を並べているの」 「知ってるよ、ひな人形でしょ」 と一人が言うと、三池が 「よく知っているね。そう女の子のお祭りに飾る人形だよ」 その言葉に 「へえ」「えー、女の祭り」「持ってない」「無くなっちゃった」 多くの子供たちの言葉に 「そうなんだ、大事な物を無くすのって悲しいよね。よっちゃん、そんなこと言っていると明日ミンメイ姉ちゃんに呼んでもらえないぞ」 と三池が返す。そして 「部屋だと大きく見えたけど、ここだと少し小さいぐらいかな」 呟いた後に子供達へ 「飾り終わりました。せっかくのひな祭りなのにひな人形がないのも寂しいよね」 その言葉に 「見たことない」「何でいっぱいの人形があるの」 また子供が好き勝手なことを言う。 「どうやら昔に女の子の幸せを願って飾っていたみたいだよ」 「へー」「なんで知ってるの」 それには 「育ててくれた人が詳しくてね。みんなの幸せを人形を飾りました」 その言葉に女の子達が盛り上がるが 「おれ男の子」 という言葉に 「じゃあ帰ってもいいよ。女の子達だけで盛り上がろうね。明日はひなあられを用意しておくからね」 三池が返すと良く分からないが女の子が盛り上がり、更に三池は 「本当にミンメイ姉ちゃんに呼んでもらえないぞ、よっちゃん」 と続ける。 「ちぇえ」 とよっちゃんが不満そうに返すとみんなが一斉に笑う。笑いが収まったタイミングで一人の子が 「どうやったらこんな複雑なの並べられるの」 質問すると 「一度家で並べて確認したよ」 「えー」「わざわざ飾り直したの」「おうちに入れてくれれば良かったのに」「もっと早く見たかった」 「だから分からん奴らは」 珍しく露骨に嫌そうな表情で三池が呟く。子供に重要機器や重要情報を壊された経験があるのでしょうか。 その三池が柔らかい表情に変えて 「ここにひな飾りがあるんだけど、みんなも欲しくない?そこで今日はひな人形を作ろう。男の子は5月に男の子のお祭りがあるから、今日は女の子を手伝ってあげるように。男の子が作ってもいいんだぞ。ここではある程度作って、色塗りとかは帰ってでも作業できるからね」 そしてサンプル品を手に取りひな人形作りの作業の話をする。 作業の説明が終わり一段落したところで三池が 「作業が早く終わった子は、ひな人形を作ることができないほど働いているお姉さんたちに感謝の言葉を書いてね」 と色紙を並べる。 「良く艦内放送でも声を聞く美人のお姉さんたちに向けてだよ」 作業が終わった子や作業に飽きた子が色紙にコメントを書いていく。その中で1枚だけ違う色紙にある子が気付く。 「これ見慣れない花がある」 それを受けて 「ほんと」「何この花」 と盛り上がるが、三池は 「これはね3月3日がお誕生日のお姉さんがいるんだ。そのお姉ちゃんへの誕生日プレゼントなんだ。丁寧に書いてね」 ひな人形作りの作業は難しいものではなかったので順調に進み、多くの子が色紙にもコメントを書いて多くの色紙がカラフルな文字や絵で埋まっている。 「じゃあ明日は完成品を見せてね。見せてくれたら、約束したようにひなあられをプレゼントするからね」 「思ったよりも順調に進んだな」 と今日の成果である色紙を見る。 「それでもひなあられを用意するからそれほど時間がないな。しばらくは飾っておくか。多少遅れても困らないだろうし。いやこの艦にいる女の子に影響するか」 そう言って三池が柔らかく笑う。
if #02 2009年3月2日 後書き Side Storyに戻る